検索エンジンといえば、ウェブ上にある無数の情報をキーワードひとつで見つけることができる便利なツールだ。
検索エンジンを使えば世界中のウェブ上に散らばっているありとあらゆる情報に、瞬時にアクセスすることができる。
世界中の情報をユーザに提供するためにまず何よりも大事なのは、検索対象となる「データベース(DB)」(インデックス)の量だ。
事実、検索エンジン各社は「インデックス数」、つまり保有している「DBの数」を競っていた時代もあった。
(Googleは「*億のウェブページから検索」とインデックスしているページ数を常にトップページに表示していた頃もあったように)
検索エンジン各社は「より多く」「より早く」を競い合い、利便性を追求し、淘汰を繰り返してきた。
そうした努力もあり、「検索エンジンを使って情報を探す」という行為が今日のインターネットユーザにとっては当たり前の行為となった。
当たり前、つまり一般化した今、「検索」はインターネットを利用する老若男女にとってなくてはならないものになりつつある。
しかし、これから「検索」が真の意味で生活の中に浸透していくためには、「検索」という行為を根本的に見直す必要も出てきている、と思う。
「本当に必要な情報とは何か」「ユーザが検索してまで知りたい情報とは何か」、もう一度原点に立ち返る必要があるのだ。
たとえば近所のおいしいうどん屋さんを検索するときに「うどん」と検索する。
日本全国、まして世界各地のうどん屋の情報がそのままずらずらと表示される今の検索エンジンでは、とてもじゃないが「近所のうどん屋」を探すのは大変だ。
(もちろん検索になれているユーザは「絞り込み検索をすればいいじゃん」と思うかもしれないが、多くのユーザはそうはいかないのだ)
検索対象となるデータは多ければ多いほど良いのは言うまでもない。
しかし、今日のインターネット世界を見れば、新聞社やマスコミだけが情報を発信しているだけでなく、
掲示板やブログを使って、世界中の個人が自由に情報を発信している時代になっている。
それらをそのまま検索結果として表示すればどうなるだろうか。
ユーザは確実に情報の波におぼれてしまう。
欲しい情報を欲しいときに的確に表示する。これが検索エンジンの根本ではないだろうか。
(これを実現する仕組みを作るには、まだまだ試行錯誤が必要だが)
ともすれば、検索エンジンは本当にグローバルである必要はあるのだろうか?
私は(少なくともユーザにとっては)ローカルであるべきだと思う。
最近「Swimmie」というソーシャルブックマークサービスが気になる。
自分がブックマークしたサイトと関連の強いサイトを自動的に見つけてお知らせしてくれるサービスだそうだ。
こういった機能が検索と結びつくとかなりおもしろくなると思う。
しかもこのサービス、学生2人で作っているらしい。
検索サービスの企画をしているときにもっとも重要な要素のひとつに「検索キーワード(= 検索クエリ(Query))」がある。
「検索クエリ」とは「今」という瞬間瞬間を反映した「ユーザの声(ニーズ)」である、と僕は考えている。
「検索」はサービスを運営しながらユーザの声をいつでも把握できる、実にユニークなサービスである。
検索サービスの企画者である僕は、そんな「検索クエリリスト」を毎日何回も目を通している。
最近僕が企画のテーマにしていることのひとつに、
「この一見”無機質な文字列”をいかにして”有機的に、直感的に”サービスに反映できるか」というテーマがある。
GoogleにしろYahoo! JAPANにしろ、日本の検索は実に「無機質」だ。
日本人の感覚に合っているといえば合っているのかも知れない。
しかし、新聞や映画・テレビなど「メディア」と呼ばれるものは、インターネットと反して有機的で感情溢れるものだと思う。
(個人的な見解だが、最近よく耳にする”Web2.0″という言葉は、「インターネットの有機メディア化」のヒントにもなっていると思っている)
では、もっともかけ離れているように見える「検索」に焦点を当ててみよう。
たとえば”地名”を例に挙げる。
“新宿” と “新宿区” – それぞれのキーワードで検索をすると、ほぼ同じ検索結果が表示される。
しかし「検索クエリリスト」に目を通すと、両者ともほぼ同じ程度ずつ検索されているのだ。
ということは、ユーザは”新宿” と “新宿区” – これらのキーワードを無意識に使い分けているのではないか、と思う。
つまり、両者の検索結果に対して「違うもの」を求めているのではないか。
(ここからは個人的な感覚になるが)日常生活をイメージすると、
・「新宿で会おう」 – このときの”新宿”は「新宿駅」やその近隣を意味している
・「新宿区の税金って高いよね」 – このときの”新宿”は「区政」や「暮らし」を意味している
普段の生活の中で「区」という接尾語がついただけで、私たちは微妙なニュアンスによる”使い分け”を無意識にしていると思う。
それが否応なく「検索」にも反映しているのだと、(個人的には)思えて仕方がないのだ。
これは僕が「検索クエリリスト」を見ながら、普段の生活をイメージして感じた率直な気持ちである。
それが正しいのかについては分析・検証する必要があるし、実際のサービスとして完成させていくまでには長いプロセスが必要だ。
企画者にとって大切なことは単なる「知識」だけではなく、幅広い「経験」や「感覚」だと思う。
僕はその感覚を「アンテナ」と呼んでいるが、
アンテナの感度を常に研ぎ澄ませている(MAXにしている)と、実は「企画の種」は日常生活の中にこそゴロゴロ転がっているのが良く分かる。
いろいろな企画者と一緒に仕事をすると、企画者同士のアンテナ波長も「合う」「合わない」、たくさんある。
「尊敬する、見習いたい企画者」がいる一方で、「この人ほんとうに企画者なの?」と疑ってしまうような人もいる。
僕だって切磋琢磨し続けたいし、そうしている(…と自分では考えている)。
しかし、アンテナの感度を大人になってから高感度にすることは難しい。
「それ」に気付けるかは、その人自身を形成している「キャラクター」や「センス」とも密接に関わってくる。
実際に「企画者」に必要なことは「HTMLをキレイに書くこと」でも「パワーポイントを美しく作り上げること」でもない。
「キャラクター」や「センス」を磨き、「アンテナ」を高感度・広面積にしていくことだ。
その上、なによりも僕はユーザを愛する企画者でありたい。
まずは「ユーザの声」(= 検索クエリ)から”ぬくもり”を見つけ出し、”温かみ”のある有機的な検索サービスを。
「どのような検索結果を表示させればいいのか。」 – それは「検索キーワード」によって大きく左右されるのはもちろんであるが、たった「一つ」のキーワードであっても、検索結果の表示方法は無限大にあるのだ。
(実際、検索サービスを提供する側にまわると、この部分が一番頭を悩ませる。)
「絞り込み」や「検索演算子の使い分け」などが出来るユーザは(サービス提供する側から見れば)いいのだが、
一般ユーザにとってこの検索方法は、実にハードルが高いのだ。
事実、検索クエリのログを分析すると、その大部分が「1単語」あるいは「2単語」で構成されている。
検索キーワードが単純であればあるほど、ユーザの意図を汲みとるのが難しくなる。
たとえば「渋谷」と検索するユーザがいるとしよう。
あるユーザは「渋谷の天気」を知りたいのかもしれないし、
「渋谷駅の乗り換え情報」を知りたいのかもしれない。
はたまた、「渋谷区に転入するための手続き方法を調べたい」のかもしれない。
このように、たった「一つ」の検索キーワードには「多くのバックグラウンド」が含まれている。
一般的な検索エンジンでは「検索したキーワードがページの中に含まれるサイト」のみを検索結果に表示させる。
そのため、検索キーワードが「1単語」の場合、それに該当するサイトはインターネット上に無数に存在することになる。
これではユーザが欲しい情報にすぐにたどり着くことが出来ない。
ユーザの意図を「的確に」汲みとるにはどうすればいいのだろうか。
そんなときに有効な手段が、「クラスタリング」の技術だ。
「キーワード」から関係性の高い「プロパティ(要素)」を可能な限り多く生成し、ユーザの「意図」を把握、生成された無数のプロパティを分類する、という仕組みだ。
機械ですべて出来てしまえば簡単だけれど、残念ながら機械は「言葉の意味」までは分からない。
やはり、ある程度は「人の手」が介入する必要がある。
NHNの「1noon.com」の技術はこうした「クラスタリング」技術を活かした検索エンジンである。
この技術は、我々が日本に進出するときにもコアとなりうる機能だろう。
「検索結果がユーザの状況によって動的に変化すれば素晴らしい検索エンジンが生まれるはず。」
これが前項にお話しした内容です。
そのための方法としてまず考えられることが、ユーザの「見えない情報を検索クエリとして認識する」という方法です。
京都に住んでいる人が今日の天気を知りたいときには、「天気 京都」などと入力して検索すればいいのですが、多くのユーザは「天気」しか入力しません。
「天気」とだけ入力すると、「ダイレクト検索」サービスによって付加情報が検索可能なサイトであっても、
おそらく日本の首都である「東京の天気」がデフォルトで表示されるサービスが多いでしょう。
京都の天気を知りたいときに東京の天気が表示されれば、これほど無駄な情報はないですよね。
(それならばむしろ表示されないほうがマシです。)
こんな時に「見えない情報」として有効なのが「ユーザのIPアドレス」になります。
「IPアドレス」は地域ごとに異なるので、ある程度の範囲(市・区程度)までの特定が可能です。
IPアドレスによってユーザの現在地の場所を把握できれば、その場所の天気を表示させてあげればいいのです。
たとえば、その人がパリに出張しているときは「パリの天気」を表示させる。
こんな具合です。
ユーザが実際に入力する検索クエリ自体には代わりはないけれど、検索エンジンがユーザの意図を自ら汲み取って検索結果を動的に変化させるのです。
最近は検索エンジン各社が「パーソナライズ」というテーマに取り組んでいます。
何を持って「パーソナライズ」かは各社の企画や開発によって異なるとは思いますが、
ログインベースの情報は確かに有効であると僕も思います。
僕は「Google Search History」というサービスを頻繁に利用します。
過去に見たウェブページをもう一度見たいとき。そんなときに限ってURLが思い出せないことは良くあります。
いちいちすべてブックマークしているわけではないし、
会社や自宅、出張先といったようにPCの利用場所も頻繁に変わります。
「Google Search History」ではまず「Google」にログインしおいて、後は普通に検索していれば検索クエリと閲覧したページが自動的に履歴として保存されるので非常に役に立ちます。
プレゼンの最中に「この市場分析資料の数字はどのウェブサイトにあったの?」と言われたときには、
「Google Search History」を見れば一目瞭然なのです。
最近思うのが「この「Search History」のデータベースも「見えない情報」として役に立てられるのではないか?」ということです。
頻繁に検索するクエリ、頻繁に閲覧するウェブサイトからユーザの特性を分析・把握する。
これは決して不可能なことではないと思います。
いずれにしても、ユーザの「見えないクエリ」をどうやって把握していくのか、
それこそが「ユニバーサルサーチエンジン」のコアなテーマになってきます。
あなたにとって「検索」とはなんでしょうか?
「知りたい情報について探すこと」ですか?
それとも「未知の情報と出会うこと」でしょうか?
「検索」という行為に求める結果は千差万別だと感じています。
たとえば「ドコモ」というキーワードに対して、
「ドコモの新製品の情報」を知りたい人もいれば、「ドコモの料金プラン」を知りたい人もいます。
他にも「株価を知りたい」「ニュースを知りたい」「海外での利用方法を知りたい」など
当然”人”によってもバラバラですし、
出張前に、給料日前に、朝のニュースを見た後に…など、検索をする”時”よっても変化します。
検索に慣れている人であれば「ドコモ 料金プラン」など絞り込みをすればより適切な情報のみを検索できるということを知っていますが、実際はどうでしょうか?
検索をするときに”ドコモ”プラス「自分が知りたい情報を絞り込むためのキーワードを追加」して検索するユーザーはごく少数なのです。
理由は様々だと思います。
絞り込みという機能を知らないユーザーもいれば、単にめんどくさいというユーザーもいるでしょう。
人や時間によって「検索結果」が適切に変化できれば – 何を持って「適切」かと判断することは難しいのですが、”そのユーザー”が”そのとき”に欲しい情報を検索結果に提供できれば、これほど満足するサーチエンジンは他にはないと思います。
これこそが僕の思い描く究極の「ユニバーサルサーチエンジン」なのです。